BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣 感想

アニメブルリフ澪があまりにも良かったので再プレイしたところ、記憶よりもはるかに良い物だったので感想を書きました。

 

 

世界説明

白井日菜子は将来を嘱望されたバレエのダンサーでしたが、足に致命的な怪我を負い、バレエを諦めざるを得なくなりました。そして若くして自分の人生に何の意味も感じられなくなってしまいます。
本作はこの少女がいかに挫折と向き合い、新しい一歩を踏み出すのかという話になっています。
怪我をした足で未来に一歩踏み出す話。意味の重なりに胸が高鳴ります。

日菜子はコモンという異世界に移動するとリフレクターという魔法少女に変身することができ、怪我を気にせず自由に動き回ることができるようになります。その自由さを端的に表しているのがジャンプです。

コモンというのは現実世界の人間の感情と連動していて、現実で人の精神が不安定になるとコモンにフラグメントというものが発生するので、フラグメントに触れてその不安定さにアクセスし共感することで自分の心に取り込むことができ、それが強さになっていきます。
これらフラグメントを集めて原種と呼ばれる敵を倒すのが本作の目的になります。

 

日菜子の精神的な問題

日菜子はバレエにすべてを捧げていたため、怪我をして二度とバレエの踊れない人生になんの意味も見出せず、自分にも他人にも興味を失った状態にあります。

ゲームではクエストという形で他人の心を覗き、それを理解することで強くなると表現されます。
他人に触れることで自分の中の感情と向き合ううち、日菜子の感情も灰色の単色から複雑なものへと変化していきます。

 

取り巻く登場人物

へたりこんでしまっている日菜子に物語はまず立つことを伝えます。
日菜子は足の怪我によって将来に希望が持てず、未来に一歩踏み出すことができません。
日菜子を取り巻く登場人物たちもそれぞれに日菜子の問題を浮き上がらせる特徴を持って現れます。

一部抜き出すと、本当のことを抉り出すラップを趣味にもつ早苗と、本当のことを伝えるジャーナリストを夢にする亜子。思いは言わなきゃ伝わらない千紘に対して、思ったことをすべて言葉にしてもかえって伝わらない史緒。見えていることがすべてではないと思わせる性格の

極端なキャラクターばかりが登場するのは、日菜子の「バレエの踊れない自分に意味はない」と考えていることに対しての反論になっていて、人生における異物である他人との向き合い方を伝えています。
そして物事の捉え方として、登場人物たちの性質を通して、極端ではいけない、諦めてはいけないと説きます。

 

人生の異物との向き合い方

日菜子の人生にとっての究極の異物は足の怪我です。
これはクラスにおける麻央、現実におけるダアトで表現されています。
この物語はそれら異物との付き合い方を通して、異物との向き合い方を教えてくれます。

麻央は悪意の塊であり、絶対に理解しあえず、日菜子と同等の力を持つ少女です。悪意に晒されて同じように挫折をおぼえ、より強い悪意になることで悪意を制御しようとしてしまいました。
麻央は日菜子を虫唾がはしるほど嫌いだと言い、一方で日菜子のような世界があることを認めます。つまり、麻央は人生の究極の異物である『白井日菜子』を受け入れたのです。
日菜子は麻央を認めないし受け入れないけれど、共通する思いを落とし所として麻央と手を組み、原種ネツァクを撃退しました。

コモンの化身ダアトは究極の敵です。勝っても負けても人間は滅ぶしかありません。
日菜子だけの問題と考えると、怪我などなかったことにしてしまうか、怪我もユズとライムとの記憶も抱えて生きるのかという岐路に立たされています。ユズとライムとの記憶とは、バレエを夢中になって踊っていた過去の自分をどう扱うのかということと繋がります。そして日菜子はダアトを何度でも跳ね返すことで共存することを選択しました。
挫折をしたとしても、過去のバレエをしていた自分は消えません。

 

バトルシステム

何度でも跳ね返すという行為はゲーム性でも表現されています。
通常戦闘ではノックバックというシステムで敵のタイムラインを跳ね返します。
原種を一度追い返してから再戦するので、全員と二回戦っています。
原種を追い返すことしかできなかった日菜子が、最後には強い意志を持ってダアトを跳ね返し続けると宣言するまでに成長します。
日菜子は光がなければ輝けない星から、光を受けて輝く宝石に変化しました。
タイトルにあるブルーリフレクションです。

 

日菜子はバレエを失った未来を受け入れ、ユズとライムとの思い出を抱えて、白いキャンバスのような未来に一歩踏み出しました。
エンディングでは白いキャンバスに輪郭が現れ、続いて色彩が溢れて新しい思い出が描かれます。原種戦の後の未来で日菜子は仲間たちと青春を謳歌しているのです。

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結論として、ブルーリフレクションは人生にとって望まれない異物とも一緒に生きていくしかないというテーマを持つ、白井日菜子の成長物語といえるでしょう。

蜷川麻央について

シナリオを咀嚼するために麻央に着目して周回してみたところ、序盤からゆっくりと丁寧にフラグメントが暴走するように積み重ねられていたことがわかりました。

はじめは更紗です。更紗は麻央の友人であり、立ち位置も麻央は更紗の隣を選びます(あの麻央が、です)。
おそらく自分と同じように努力し舞台に立つ姿に共感を覚えたのでしょう。
その更紗がある日突然日菜子に奪われました。更紗が日菜子を屋上に呼び出すイベントでは麻央が牽制といわんばかりに日菜子に声をかけています。

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星ノ宮は特異点ということで、感情が暴走しやすい状態という設定があります。麻央もご多分に漏れず悪意が膨張して、クラスに負の影響を振りまくようになっています。これがいじめや窃盗の教唆です。
そんな麻央ですが、心の深奥では演じることへの強烈な喜びを秘めています。文化祭の朝練で早朝日菜子がステージの上で踊るシーンがありますが、麻央はそれを見たことで隠していたフラグメントが大きく揺れ、コモンへと日菜子を引きずり込んでしまいます。けれどもこのときはまだ麻央の仕業だと描写されません。

日菜子との人魚姫対決では、まるで人物が憑依したかのような悪意と喜びに満ちた演技を見せます。特異点であることと日菜子に感化されたことも合わさって空間が歪みコモンが現実に溢れたような形となり指輪を持たないクラスメイトたちに暴走が伝播して次々と気絶していきます。

麻央は自分の悪意を自覚しています。その上で自分を殺“さ”ないと言います。
これは意図を伝えるためには自分を殺す必要があると史緒にいう日菜子と、自分を殺し過ぎて意図の伝わらない千紘のエピソードにかかっていきます。

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最後に麻央は指輪を通して日菜子の世界に触れ、虫唾をはしらせながらも日菜子の世界があることを知りました。
その後、指輪の影響下に置かれた麻央は本来の姿を取り戻し、悪意を上手に制御してうまくやっているようです。

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生徒会でのエピソードでは、全員が丸く収まるように損をして得を取るように企みましたが、計算外の人間関係によって思いがけず恨まれてしまいます。良かれと思ってやったことでも結局は悪意を向けられる。かつての両親を思わせます。
けれどいまは隠しようもなく心を全て知られている日菜子がいます。日菜子にだけは麻央がショックを受けていることが伝わってしまうのです。
日菜子の世界を知ったいま、麻央は少し変わったようです。平気で地を出すようになりました。

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悪意の塊でしかなかったかわいそうな麻央は変わりました。日菜子はどうでしょうか。

ダアトに突きつける口上が少しもってまわったものにように感じて初見では入ってこなかったのですが、ちゃんと見るとたぶん舞台のセリフかなにかの引用で、「そういう役」なのでしょうね。サポーターはみな自分の得意なことを出してきますし。

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ちなみに麻央から最初に得られるフラグメントは「映す逆さ鏡」というものなのですが、効果がスキル威力と引きかえにHPを消耗するというもので、この説明から察するに麻央は日菜子につっぱっているとき痩せ我慢をしていると考えることもできるわけで。麻央はかわいいですね。

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さいごに

本当に素晴らしいゲームでした。再プレイしてよかった。でもやっぱり気になるのが、美少女やお色気押しのパッケージですね。届くべきターゲットが全力で目を逸らすような気がします。かくいう自分も風呂やアングルやパンチラ技など死んだ目をしてやり過ごしていましたし。
けれど、悔しいけれど白井日菜子の魅力がすごくて、なんかわかってしまうんですよね。日菜子をはじめとしたキャラクターたちの魅力に抗えない。わざわざ言わないけどめっちゃわかる。それだけになあ……。

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