ブルーリフレクション澪 8話までの感想

いま8話まで見たところですが、4話までで作られたキャラクターたちのささやかな繋がりが剥離したところで、キリも良いし感想を書くなら今だなと思ったので感想を書きました。

 

 

 

ストーリー感想

1クール中盤となる5話から8話はすれ違っていく少女たちの物語だ。5話冒頭で詩の語る「愛も友情も、“つながりも”幻想」がそのままテーマになっている。

駒川詩

詩は生きているのか死んでいるのかわからないような生ぬるい生活を心の底では否定していた。そんな詩を救ったのは皮肉なことに男性からの暴力で、刺された痛みと血によって生きていることを初めて実感してしまった少女だ。詩は痛みによって他人と繋がろうとしたが、由紀姫は都へと手を伸ばしてしまった。この失態のせいで仁菜も美弦の元へと行ってしまい、詩はひとりぼっちになってしまった。いまや詩にとって「愛も友情も、繋がりも幻想」であり、信じられるものはただ痛みだけとなった。

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山田仁菜

仁菜は親の愛も戸籍もない、何もない少女だ。母親を奪われ、望を奪われた。大切な人を失った仁菜は「愛よ希望よ歓びよさらば」と言って死を願う。だが、母親や望との「追憶」との別れを美弦によって止められる。そして美弦の胸ではじめて大切な人を失った悲しみで泣くことができた。仁菜は美弦を失わない為に戦う。いわば、もうひとりの陽桜莉だ。

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平原陽桜莉

陽桜莉はついに姉である美弦と邂逅した。けれど、それによって二人は引き裂かれていたことを知る。その事実から目を背けようとした陽桜莉に寄り添ったのが瑠夏だ。瑠夏の「自分の思いも大切にして欲しい」という言葉で陽桜莉は美弦のことが本当に好きな自分の気持ちと向き合った。大切な人は絶対に許せない人でもあり、信じていた姉のことを実は何も知らなかったことが悲しくてただ瑠夏の胸で泣くだけだった。

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羽成瑠夏

瑠夏は共感する能力が著しく欠けている少女だ。短冊に込められた願いのうち、仁菜の褒められたいという願いは美弦によって叶えられ、陽桜莉の美弦に会いたいという願いも一部叶った。だが瑠夏の陽桜莉の力になりたいという願いは叶えられなかった。姉が敵であるとわかったとき声をかけることができなかったし、変身できないときに陽桜莉の代わりに作業をしただけで立ち直ったのは陽桜莉自身の力だ。と、瑠夏そう思っているのだろう。屋上で二人で話している時も瑠夏は手を取られるまま、胸で泣かれるままにしている。その目は虚ろで肩を抱くこともできない。共感できないからどうしていいのかわからないのだ。

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屋上での構図は水面に反射する景色と同じだ。

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陽桜莉の上にある眩しい太陽は心が開かれた印だ。けれど瑠夏の足元の光はとても弱々しい。

そんな瑠夏の思いは七夕祭りのゴミとして捨てられた。瑠夏は陽桜莉のアパートでリフレクターに誘われても箸を置いて拒否したし、姉と引き裂かれて嘆く陽桜莉に何もしてやれない。

仁菜は美弦を手に入れられなかったし、陽桜莉は美弦と引き裂かれたことを知った。美弦は絶望を維持するため陽桜莉と離れなくてはならなかったし、詩は仁菜を失った。瑠夏とモモは陽桜莉の力になってやることができなかった。ただひとり、紫乃だけがフラグメントを手に入れたが、おそらく生贄であるため願いが叶うのは望ましいとはいえないのだろう。

このようにして、七夕の短冊は誰の願いも叶えなかった。8話まででこのようなすれ違いが描かれていると私は受け取った。

描写と構図

このアニメでは光るものは何らかの象徴として扱われている。わかりやすいところでは陽桜莉のオルゴールの中の指輪や都のスマホケースだ。これは大切な思いの象徴なのだろう。

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これと対比されているのが仁菜の冷蔵庫とバタフライナイフだ。

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暗闇の中で開けた冷蔵庫の中は空っぽで、望を失った仁菜の刃には殺意があった。思いの強さが武器になるこのアニメで、現実でもナイフを持たせて刃を光らせるのはそのような意図があってのことだろう。オルゴール、バタフライナイフ、冷蔵庫に共通しているのは四角形で中に収納できるということだ。

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詩集も四角形であり、思いは「詩」と言う形で具体的に書かれている。

三角形と四角形はかなりはっきりと意味づけされていて、たとえばOPで比較すると、

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このように表現されている。陽桜莉と瑠夏だけが四角形で囲われている。指輪が三角形であり、思いを象徴しているであろう各種小物は四角形だ。ちなみにテーマ曲のDiViNEは三拍子だ。仁菜、詩、紫乃の顔が「色のついたガラス」に映っていることも興味深い。

このように、スマホやモニターの光も似たような意味があるのだろう。

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共通点は孤独なので暗闇の四角い光は孤独を表しているのだと思われる。

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暗闇の中で花火を見上げる少女たちもまた孤独なのだ

仁菜が望から受け取った初期化されたスマホは人生のやり直しといった意味合いになるのだろう。孤独の象徴としてのスマホも、何も持たない仁菜にとって望との大切な繋がりだ。「おうち」の合鍵と合わせて、望が仁菜にとってどれほど「希望」なのかが窺える。ちなみに橋のボスであるサキは「咲希」と書くらしい。希望が咲くというわけだ。

仁菜を背後から照らす描写がある。これは陽桜莉との対比になっていて、似た構図が繰り返されることで美弦はかけがえのない存在だと強調される。

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その美弦だが、陽桜莉を傷つけようとする仁菜に対してとてつもない悪意を放って干渉してしまう。(原作の麻央のように)

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麻央のフラグメントは強い悪意を持っていて、曝されると強いデバフがかかる。

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仁菜が陽桜莉に刃を突き立てようとした瞬間、美弦からすさまじい悪意が放出された。

仁菜と美弦の共鳴は百とのそれに比べるとあまりにも質の違うものだった。

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百とは対等な目線で微笑んでいるのに対し、仁菜には無表情で画面は傾いている。

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手を正方向で合わせることで思いが通じ合ったと描かれるこの世界で、仁菜と美弦は逆方向に合わせられている。この二人はまったく繋がっていないのだ。

6話には二人で鍋をつつくシーンがある。

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この構図がとても好きだ。鍋という家族の象徴のような食べ物をつついているにも関わらず、二人の少女の間は黒い空白で覆われている。のちにふたりはお互いに過去があることを認め合って、ようやく仲間になる。

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暗闇とモニターの光は前述のとおり。二人は少し打うち解けて、仁菜はテレビではなく望と向き合った。意味はこのように推移している。

仁菜にとっての「おうち」とはなんだろう。

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仁菜にとっての「おうち」とは、食べるものがない場所であり、母が2回出ていくものであり、国民保険の担当者と児童相談所の所員が誰も救わない場所であり、男と一緒に帰ってきた母に追い出される場所だ。

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合鍵のある『おうち』からも望が出ていき、望は同じ名をもつ別人になって帰ってきた。これらがすべてほとんど同じ構図で執拗なほどに描写される。仁菜にとって心休まる『おうち』は一度もなかったのだ。

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怒りで歪んだ視界と涙で滲んだ視界。

仁菜は望を奪った咲希に向けたものと同じ殺意を陽桜莉に向けてしまい、それを見て怒った美弦の悪意が自分に向けられたことまで察知してしまうのだ。

それでもなお仁菜は美弦を思うことを抑えられず、『自分のような人間を生み出したくない』という思いは『美弦の向かう先に一緒に行きたい』とズレてしまい、変身が解けて思いの象徴である剣を落としてしまうのだ。ここから察するに、美弦についていくというのはおそらく心中のような意味合いなのだろう。

ステンドグラスのフラグメント

フラグメントがステンドグラスに移される描写によって色々わかってきた。

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2話と6話で中央のフラグメントが消失している。

まず1話の時系列。赤い指輪を持つ陽桜莉が気絶するように倒れている状態がまずあって、次にネツァクと戦う百とそこに向かう美弦のシーン。そしてネツァクの光線が炸裂する。そのあとに陽桜莉がアパートに向かって走り、オルゴールの中に青い指輪を発見する。最後に美弦が紫乃と儀式を行う、という流れになるのだろう。

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わかりにくいが、中央で赤い指輪が光っている。

ここで気になるのが、はじめにひとつだけあるフラグメントだ。

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このフラグメントの持ち主は陽桜莉か美弦か百か紫乃のうちの誰かになるのだろう。陽桜莉が赤い指輪を持っていたのだから陽桜莉以外の誰かのものと考えるのが自然だ。佳奈の例からするとフラグメントを抜くとバランスが崩れてしまうらしいが、佳奈をはじめとした少女たちと美弦は似たような表情をしていると思える。泣きながら「私、間違ってた」と悔やむところもそっくりだ。原作と同じくループものと考えられるので、百だけでなく陽桜莉にも記憶がないと考えると辻褄が合うように思う。というわけで美弦か紫乃のフラグメントと考えるのが妥当だ。1、5、8話と2、6話の違いだが、前者は紫乃がいて後者には紫乃が関わっていない。まとめると、紫乃がステンドグラスの前に立ったとき最初のフラグメントが現れるというルールなのだろう。

フラグメントはもともとコモンに発生するもので、それを現実に引きずり出すとコモンのような空間(リープレンジ)が発生するようだ。ステンドグラスが特異点だとして、コモンの欠片を特異点の窓に張り付けて現実とコモンを繋ごうとしているのだろう。紫乃はフラグメントを窓に張り付けるのと引き換えに、窓の封印を自分の身体に移しているようだ。ユズとライムも現実の肉体を失って魂だけがコモンに辿り着いたということなので、おそらく実験は紫乃の身に起きているようなものだったのだろう。そう考えると、フラグメントは原種の一部でもあるので現実の時が止まるのも理解できる。

ちなみに原作ではユズとライムの二人が亡くなっていることを考えると、紫乃ひとりでは到底足りないように思える。原作を踏まえるとあと一人必要だ。

はじめ美弦は青い指輪を持ち、陽桜莉が赤い指輪だったが、状況的に美弦が赤い指輪をつけて青い指輪を置いていったのだろう。陽桜莉の身代わりになったということだろうか。

OPについて

蓮のガクのことを「うてな」と呼ぶらしい。台座という意味があるようだ。OPで蓮にたとえられているのが瑠夏、百、美弦の三人だ。

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まだ蕾の瑠夏、花が散って種とうてなが残された百に対して、美弦の蓮にははじめからうてながなくなっていて、それはまるで彼岸花のような徒花だと描いている。

人物紹介からの切り替えで、指輪の中に美弦が映り込んでいたりもする。

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思いが武器になるこの世界で、先端を突き刺すタイプの鎖を持ち、どんなに跳ね返されても百の“思い”に絡み付く美弦。

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しかも股下から覗くアングルが二回繰り返される。相当な思いを秘めているようだ。

_お

タイトルが表示される瞬間、フォントが三色に分かれるが、赤青緑は指輪の色にも思える。まだ黄色の指輪の行方もわからない。反転して茨に覆われるが、その切り替わりも美弦のワープの仕方とそっくりだ。

 

以下余談

プルメリア

_プ

雲の形と地球儀

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水に映る雲はあえて同じものにしているのだろうし、何らかの意図を感じる。地球儀の大陸が異常な形をしていて気になっていたが、なんとなく雲のようにも見えるしパンゲア大陸のようにも見える。鉄人兵団でいうところの鏡の中の世界のようなものだろうか。

コモン

_喜び悲しみ

場所はたぶん喜びと悲しみのゾーンで敵はリューク族のどれか。

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