ブルーリフレクション澪 18話に関しての感想

ブルーリフレクション澪18話で気になるシーンがありました。

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このシーンです。

シーンの意図についてあれこれ考えを巡らしているうちに、
「陽桜莉が見ているものは、昼間では見えない星で、夏の大三角を構成する織姫と彦星なのではないか?」
という考えに至りました。

 まず七夕である理由ですが、陽桜莉にとって七夕は重要な意味を持っています。母が蒸発してしまった陽桜莉にとって短冊に込める願いは「母に会いたい」というもので、織姫と彦星に母との再会を重ねています。(8話)

母のいない陽桜莉は「かわいそう」だと言われてしまいますが、陽桜莉にとって美弦との生活は素晴らしいものなので、かわいそうだと評されるのは心外です。なので常に楽しそうに笑って過ごすことを心がけます。

ある日、電球が切れてしまっていることから母の失踪を思い出して泣きそうになりますが、美弦に気を遣って我慢します。けれど、そんな陽桜莉の気持ちを察した美弦は胸で陽桜莉を泣かせてあげます。
陽桜莉が涙を我慢した理由は、泣いてしまうことで自分が美弦との生活を否定してしまうように感じたからです。そして、美弦は「全部わかっているよ」と陽桜莉を抱きしめます。
こうして陽桜莉の心から母は少しづつ消えていき、美弦で満たされることになりました。

美弦と陽桜莉で行った七夕祭りでは、短冊には姉妹揃って「母に会いたい」と書いてはいるものの、陽桜莉は「織姫と彦星が会えたね」と言っています。織姫を美弦、彦星を陽桜莉に見立てて、陽桜莉は母ではなく美弦を選んだという意味になっているのでしょう。

つまり陽桜莉にとっての空は織姫である美弦と彦星である自分が一緒にいられる場所であると言えそうです。

次に瞳の描写についてです。
陽桜莉の瞳と似た描写のシーンがいくつかありますので、これらのシーンと比較することで意図を探ってみます。

 

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美弦にとって陽桜莉は言うまでもなくかけがえのない大切な妹です。
大切すぎて陽桜莉の大切なものを守るために「母に会いたい」と言って陽桜莉と同じであると嘘をつき通してしまいました。そしてそれが決定的な違いとなって陽桜莉を追い詰めてしまう結果になります。
1枚目はそんな陽桜莉のフラグメントが自壊する瞬間を目の当たりにしたシーンです。

 

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2枚目に映っているのはモモのフラグメントです。
モモは「美弦の大切なものを守る」という思いが核にあります。けれど、自分の不甲斐なさのせいで美弦が陽桜莉に手を出してしまう結果になったのだと自分を責めました。
美弦のことも陽桜莉のこともわかっていたのに、バディ失格だ、自分は中途半端だ。
モモにはこんな思いがあったのでしょう。モモのフラグメントは陽桜莉と同じように自壊してしまいます。1周目で陽桜莉が自壊した日と同じ日にです。
ここに映っているのはそんなモモのフラグメントです。

 

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3枚目は仁菜の瞳です。
仁菜の世界には何もありません。大切なものなど何もないので瞳には何も映っていないのです。

こうして比較すると、陽桜莉の目に映り込んでいる空の意味は「大切な人」だろうという予想が立ちます。
陽桜莉にとっての大切な人、つまり美弦です。


次は作中で描かれる空について比較してみます。七夕の空なのでもちろん天の川と夏の大三角です。

 

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1枚目にはベガは見えませんがデネブとアルタイルが燦然と輝いているのがわかります。

 

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2枚目ではデネブは見えませんが、アルタイルとベガが雲の後ろにうっすらと見えています。

 

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3枚目は昼ですので星は見えませんが、陽桜莉の指輪の三角形がまるで夏の大三角を模すように描かれています。この指輪は美弦のものですので、陽桜莉はリープレンジ越しの空に美弦の思いを感じたのでしょう。

これらの根拠から「陽桜莉が見ているものは、昼間では見えない星で、夏の大三角を構成する織姫と彦星なのではないか?」と考えました。
陽桜莉は夏の大三角の中に美弦と一緒にいる未来を見ていたというわけです。

このシーンに至るまでの陽桜莉からは過去の映像の反復があります。

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似せて描いてあることから、二人とも自分のせいでこんなことにと自分で追い込んで逃げ出したのでしょう。

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こちらはさらに紫乃にもかかっています。おそらく紫乃も同じような感情から逃げ出した思いがあったのでしょう。

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顎の先からたれる雫はモモの涙が美弦の頬を伝うシーンと重なります。
このときのモモは強い自省の中にいたと考えられますし、陽桜莉もおそらくそうなのでしょう。

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これらのシーンはネツァクと対峙する美弦と重なります。この後の展開も考えると、陽桜莉がフラグメントを自壊させてしまったあの日と重なるように描いているのでしょう。

これらを踏まえると、陽桜莉が空を見るシーンの意図とは、陽桜莉のフラグメントが自壊する日とその様を見ていた美弦に重ねて、フラグメントが自壊しそうなのに目線の先に美弦がいない、あの日とは異なる未来にいるということなのではないのかなと思います。
陽桜莉が頑張って美弦離れできるよう応援せざるを得ません。

これにより1クール目のopの冒頭の意図もわかってきます。
おそらく、

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陽桜莉という雫が水に落ちたが、つぼみの瑠夏と既に美弦のバディであるモモの像を揺らしただけで誰とも共鳴できなかった。

だからここにはいない美弦を求めて手を伸ばすと

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星のような指輪が落ちてきた

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降灰と闇の中で瑠夏と強く共鳴すると闇が晴れた

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波紋の数が多くなっています。

というような内容だったと考えが深まりました。

夏の大三角を構成するもう一つの星のデネブですが、青い夏の羽に成ると書く羽成瑠夏はまさに白鳥なのではないのでしょうか。

般若心経でいうとデネブがあることで夏の大三角は存在していると考えられますし、七夕の空に星がひとつ伏せられて描かれているのはそんな意図があるからなのかもしれませんね。