ブルーリフレクション澪 18話までの感想

現在18話まで放送され明日の19話の放送を待つばかりなのですが、答えを知る前の現在の感想を残しておきたく、何より自分の中で抱えきれなくなったものを吐き出さずにはいられなくなったので感想を書きました。

 

都の部屋の位置について

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知りたいと思ったきっかけは、都の「山田仁菜と一つ屋根の下なんて冗談じゃない」というような言葉で、そんなこと言いながら実は壁越しに背中合わせになってたりするんじゃないの? というような勘繰りから両者の部屋の位置を調べ始めました。 

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ベースとなる情報がこれです。

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次に都の部屋ですが、二階階段脇の角部屋だということがわかります。

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そして205号室ですが、ドアノブの位置から都と同じ並びだということがわかります。

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205ということで端からカウントして5番目の部屋であるなら、だいたいこの位置でしょう。

というわけで、白樺都と山田仁菜は別に背中合わせではなかったということがわかりました。 

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また、寮の全体図ですが、もしかしたら木が描かれていないだけなのかもしれませんね。 

般若心経から見た設定

・空
般若心経を語れるほど私は詳しくはなくてネット知識でしかないのですが、色即是空でいわれているように色とは因縁因果によってたまたま存在しているだけのもので、それらがなくなれば空に戻るだけだという考え方は、思いの象徴であるフラグメントがなくなれば因縁因果がなくなり空に戻ってしまうというブルリフの考え方と共通点があります。 

・往生
人は死ぬと魂が蓮の上で生まれ変わるという考え方で、これを蓮華化生というそうです。
此岸と彼岸を分ける三途の川に魂の生まれ変わりを乗せた蓮華を自ら流すという行為はなんとも悲しいですね。 

澪という言葉

澪には航跡という意味があるそうで、航跡とは後続の船がそれを見て通れる水路だと判断する軌跡のことだそうです。

これはテーマ曲の歌詞中にある

最深
吹けば飛ぶような火、でもただただ
それは道ゆく誰かの足を照らし
未来担う灯火となるの

フローレス
その気持ちに寄り添えるならば
私に寄り添った意味があるかな

の部分にも重なります。

そして澪の「RAY」は船を導く光線ということで灯台のことなのでしょう。

澪の名を冠する美弦はその名の通り作中もっとも間違えるキャラクターなので、その足跡が後に続く者への轍のとなることを願って付けられた名前なのでしょうね。

また、作中でひとつの描写とそれによく似た描写が対比となる形をとって、シーンやキャラクターなど至る所で見られます。

対比関係にある二者を比較することでテーマが描き出されるのは「空」から「色」に転じるようでもあり、ある描写を別の描写を読み解くために参照する行為は航跡を頼りに水路を行くようでもあります。 

皇亜未琉と橘涼楓

皇亜未琉は橘涼楓に恋愛感情を抱いている少女だ。他の誰とも違う少女である亜未琉は、涼楓を初めて見たときから自分と同じだと感じ、涼楓の中に自分と同じものを見つけた。

そんな亜未琉は、他の誰とも付き合う気がないという涼楓に複雑な気持ちを抱いている。

橘涼楓は亜未琉が自分と似ていると感じた人物だ。少女から告白をいくらされても誰とも付き合わないときっぱりしている。そんな涼楓は亜未琉がいればそれでいいと断じている。

涼楓は亜未琉とためらうことなく同衾し、顔に触れ、二人だけの思い出をたくさん共有している。
けれど、どうみても肉体関係がある距離感には思えない。二人の間には境界があり、愛し合う二人にありがちな曖昧さは存在しない。

亜未琉は肉体関係を望んでいただろう。愛と性は切り離せないものだ。だから亜未琉が抜いたのはおそらく涼楓への恋愛感情だ。であるなら、皇亜未琉は同性愛者だと予想できる。

涼楓が誰かの告白を断るたび、いっそ付き合ってくれれば自分のものではなくなるし、女性と付き合える人物なのだと救われる思いがしただろう。

さらに、他のどの少女とも違う亜未琉と同じだとされる涼楓とは、つまりマイノリティであるということだろう。性指向が女性である亜未琉は涼楓から似たものを感じ取ったはずだ。けれど違っていたということは、涼楓は同性愛者ではなかったということだ。それはトランスジェンダーだという意味になるのではないだろうか。

さらに、誰とも付き合う気がなく、亜未琉だけが一緒にいればよく、肉体関係がなく、亜未琉が思いを抜かなければ一緒にいられないと考えたなら、涼楓は無性愛だと考えられる。 

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ふたりの撮影した写真がおもしろい。亜未琉との思い出を写した涼楓に対して、亜未琉は涼楓とふたりでいる自分を写している。

この二人が一緒にいるためには、亜未琉が恋愛感情を抜くか、涼楓が自分を殺して亜未琉と結ばれるしかない。亜未琉はそう考えて、自分から思いを抜いたのだろう。答えがない問いに対してふたりはあまりにも幼くて脆い。

誰とも付き合う気がないという涼楓のセリフは亜未琉を縛る鎖でもあったのだろう。
誕生日の記憶が途切れているのは、その日カミングアウトがあったのだろう。
そんな二人の隠し事は「ナイショ」にされている。 

そんな二人の武器のモチーフが面白い。

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亜未琉のチャクラムは輪が二つでまるでペアリングだ。サブタイトルの「Rubber Ring」をもじった武器でもある。指輪のペアリングとBluetoothのペアリングの途切れにも掛かっていて面白い。

涼楓の武器は音叉の槍だ。涼楓の察しの良さを、耳を澄ませて調律する音叉になぞらえている。自分の音に亜未琉を寄り添わせてしまった部分とも合う。世界と共鳴できたことを喜ぶ背景には、誰とも共鳴できない孤独があるのだろう。そんな涼楓だから亜未琉を失うことなどできない。

ほかにも槍は突く武器であり、男根の象徴でもある。だが涼楓は突かずに叩きつける戦い方を選んでいる。

ふたりは紫乃によって思いを高められているため、亜未琉は一歩引いて夫を支える貞淑な妻、涼楓は亜未琉のために勇ましく戦う騎士のようになっている。

亜未琉が乗るバスを必ず当てられるのは、涼楓は亜未琉を縛ることで自分も縛っているので、亜未琉が乗って欲しいと思うバスに乗るのだ。つまり、亜未琉の言う答えが涼楓の答えなのだ。

そしてそれがわかっている亜未琉は涼楓の望みに答える形を取った。つまり、涼楓の望み通り指輪を受け取ったのだ。

亜未琉は思いを取り返したいとは一度も言っていない。むしろ、自分がいなくなった後のことを瑠夏に任せるとまで言っているのだ。

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こうして二人は現実では付けることの叶わなかったペアリングをリープレンジの中で付け、晴れてバディという関係になったのだ。

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亜未琉の表情から思いは読み取れないが、フラグメントが顔を大きく分断しているのは思いと行動が乖離していることを表しているのだろう。

亜未琉と涼楓の関係は以上のようなことが考えられる。
けれど物語はそれと明言せず、含みを持たせることで普遍的な関係を描き出しているので、ふたりの関係を身勝手に決めつけず、適切な距離感で現実の自分たちに置き換えて考えることができる。 

水崎紫乃という少女

ブルーリフレクション澪は登場人物たちがお互いを補完するかのように似た要素を持ち合わせているアニメで、水崎紫乃も例外ではない。
紫乃は1周目に美弦たちによってフラグメントを固定化された過去(?)があるが、指輪を拒否して思いの固定化を望まなかった少女だ。
そのときの指輪はおそらく周回した美弦の指に付けられているのだろう。 

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1話目に登場したステンドグラスにあるフラグメントの花はおそらく紫乃のものなのだろう。紫乃の病弱設定を亜未琉と似た症状だと考えれば辻褄があう。

セリフの端々から記憶を2周目に持ち越していることが察せられ、美弦のコモンが開くと同時に変身したことを踏まえると、おそらくユズライムと似たような状況に置かれている少女なのだろう。

ユズライムと似たというのは、AASAの関係者でありコモンに縁のある少女ということだ。

紫乃と他のキャラとの共通点は似た状況やポージングで表される。

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これは自責の念から逃げ出す姿なので紫乃にも似た経験があるのだろう。

美弦からの思いが偽りだったと明かされた仁菜の「美弦がどう思っていようと、私の思いは本物だ」と跳ね返した思いに怒りを覚えたのは、紫乃にも似た経験があり、「自分の思いは偽物だった」と折れてしまったからだと考えられる。だから仁菜が存在していては自分を否定することになるので、仁菜のフラグメントを抜きたいと考えている。自分に都合の悪いものは消してしまいたいという願いはブルーリフレクションシリーズに通底するテーマだ。

紫乃の思いやあやまち、繰り返し語られる「罪」「また殺すの?」といったセリフと血のついたナイフ、同じものがペアで揃えられた部屋、一人だけの紫乃、といった記憶がこの少女を紐解く鍵となるのだろう。